三陸エンリッチメント研究室

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海産真骨魚卵の浮遊性調節機構とその生態的役割

2021.07.31

【はじめに(抜粋)】真骨魚類の多くは卵生であり,卵は体外で受精,発生して棲息環境中で生存可能な仔魚にまで形態的,生理的に発達すると孵化に至る.孵化仔魚は摂餌可能になるまで卵由来の栄養である卵黄に依存して成長する.そのため卵は胚発生に使われる栄養をすべて不足なく含んでいる必要がある.また,真骨魚類の卵の特徴として,水中で発生する胚を物理的に保護するための硬い卵膜(chorion)を持つ点が挙げられる.
 漁業や養殖業の発達とともに,対象魚種の生態やそれに基づく資源管理,また増養殖のための種苗生産に関する研究や技術開発が進む中で,「良い卵」「悪い卵」といった卵質とそれを決定づける要因について強い興味が持たれてきた.卵質の評価には主として受精率や孵化率,仔魚の生残率などを指標としているが,ここには卵の発生に関する生理的なコンディションのよし悪しが問題である場合と,卵の受精率や孵化率は良好であっても卵の性質やそこから孵化した仔魚が生息環境に適応しない場合の全く異なる2つの事象を内包している.
 栽培漁業や養殖の盛んな日本では,特に種苗生産における「卵質」改善策についての研究が進められているものの,問題点は魚種ごとに大きく異なっている.そこでこの項では,自然界でみられる「卵質」の問題の中で,特に卵の浮遊性調節に関する生理学的な側面に焦点をあてて,新たな視点からこの問題をとらえるための材料を提供したい.