三陸エンリッチメント研究室

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精密凍結活餌料の鮮度および品質:市販餌料との比較(2022年)

2025.03.24

三陸エンリッチメント研究室が実施した研究では、精密凍結活餌料「Natural Ecosystem Module®︎」と市販の冷凍アミエビを比較し、鮮度と品質の評価を行いました。

精密凍結活餌料と市販餌料における品質比較評価試験

【目的】
これまでの取り組みによって、原料調達から凍結加工を経て、解凍状態すなわちユーザーの使用段階においては、組織構造の崩壊を起因とする水溶性成分の流出(ドリップ)を抑制できていることに加え、外観の目視レベルでは極めて素材と同等の形状を保持していることが確認できている。本研究においては、外観形状のみならず、当研究室の精密凍結活餌料「Natural Ecosystem Module®︎」が素材本来の物性をどの程度まで保持できているのかを明らかにしたい。

【方法】
ユーザーが容易に入手可能な市販冷凍アミエビと精密凍結活餌料との違いを、鮮度評価として一般的であるK値測定を行い、それぞれの餌料がどのような鮮度であるか評価を行なった。また、より詳細な品質評価をするため、ATP関連物質の分析を併せて行なった。

【結果・考察】
1.K値を指標とする鮮度評価

K値とは、「ATPおよびATP分解生成物全量に対するイノシン(HxR)、ヒポキサンチン(Hx)の量の割合」であり、値が低いほど鮮度が良く、K値が高いほど鮮度が悪いとされる。一般的には、魚肉の場合、K値60%以上が初期腐敗の目安(図中赤線)といわれている。今回測定した他の餌料のうち、90%以上がK値60%を超えており、精密凍結活餌料の鮮度優位性が極めて高いことが確認された。精密凍結活餌料のK値は20%以下と非常に低く、この鮮度は割烹料亭で提供される魚介のグレード(K値20%以下)に匹敵する。また、厳格な衛生管理のもと処理されているため、生食としても安心して利用可能である。

2.ATP関連化合物を指標とする鮮度評価

ATPは生体におけるエネルギーの通貨とも言われており、この物質が蓄えたエネルギーが我々の生命としての活動に不可欠となる。ATPはエネルギーを放出するとADP→AMPの順に代謝され、細胞死後はIMP→HXR→Hxの順に分解が進んでいく。

比較分析結果によれば、精密凍結活餌料は唯一、ATPが検出された。イサダはその素材特性上、ADPが細胞内でエネルギー供給以外の用途に用いられるため、ADP含有量は除外して考察する。ATPが検出されたことは、凍結プロセスが迅速かつ適切に行われた結果、細胞構造が保持されていることを示している。このことから、精密凍結活餌料イサダは自然環境で生きていた状態に極めて近い鮮度を保っているといえる。
ATPの残存は、タンパク質や酵素など他の重要な栄養素も劣化せずに保存されている可能性を示唆しており、細胞膜や組織が良好に保持されているため、魚類の消化酵素と効率的に反応し、消化吸収が促進されることが見込まれる。また、これにより栄養素が適切に保存され、魚類の成長や健康に良好な影響を与える可能性が期待される。
精密凍結活餌料は、三陸で水揚げされた直後のイサダに匹敵する品質を持ち、その鮮度が解凍時まで長期にわたり保持されていることが確認された。