👀チョウザメ追跡調査からさらに深掘りする「餌の工夫ポイント」
1.初期段階の飼育での餌料選びは、やはり重要
💡孵化直後の稚魚は非常に繊細で、与える餌によって成長率や生存率が大きく左右されることが再確認された。
2.栄養が魚の体に「しっかり入る」ことが大切
💡見かけの給餌量が同じでも、魚が実際に摂取する栄養の量に大きな差がある可能性がある(精密凍結活餌料は魚が効率よく摂取している可能性が高い)。
3.飼育の成績が良いと、水質管理も楽になる
💡精密凍結活餌料を与えた水槽では魚の成長が良好で、死亡した魚が少ないため、水質悪化が起こりにくく、飼育管理の手間が軽減される可能性がある。
精密凍結活餌料の初期飼料としての有効性を検証するため、2022年に北海道美深町のチョウザメ館で実施された給餌比較試験の追跡調査を2023年に行いました。今回は、魚種をベステル(シベリアチョウザメ×コチョウザメ)からシロチョウザメに変え、より詳細な観察を実施した。
【目的】 本追跡調査は、前年に確認された精密凍結活餌料「イサダ(ツノナシオキアミ)」のチョウザメ稚魚への給餌効果をさらに掘り下げ、成長率、生存率、摂食効率の違いをより詳しく評価することを目的とする。これにより、養殖における初期飼料選択に役立つ科学的根拠を提供することを目指す。
【方法】 飼育環境を揃えた2種類の水槽を用意し、それぞれ800尾のシロチョウザメを用いて以下の条件で比較飼育実験を実施した。
- 給餌条件 ・イサダ給餌区:精密凍結活餌料イサダを主餌として使用。 ・オキアミ給餌区:市販凍結三陸産オキアミを主餌として使用。 ※ 両区とも最初の3日間のみイトミミズを併用した後、単独給餌。
- 給餌頻度 毎日2回(午前9時および午後4時)
- 観察期間 2023年8月1日~10月11日(71日間)
- 評価項目 平均体重、生存率、給餌量、摂食効率、水質
【結果・考察】

調査の結果、イサダ給餌区は成長率・生存率の両面で市販オキアミ給餌区を明確に上回った。
・成長比較
イサダ給餌区は1.46gから9.1g(成長率523%)、オキアミ給餌区は1.5gから7.5g(成長率400%)と、体重増加で顕著な差を示した。
・生存率比較
総死亡数はイサダ給餌区が589尾(初期個体数の約73.6%)、オキアミ給餌区は684尾(約85.5%)で、特に初期死亡率はイサダ給餌区が明らかに低く抑えられた。
・浮き魚の発生状況
腹部に空気が溜まり、水槽底に潜れなくなる「浮き魚」の発生は、市販オキアミ給餌区の26尾に対し、イサダ給餌区は6尾と大幅に少なかった。これは精密凍結活餌料イサダが消化・吸収面で優れ、浮き魚発生の抑制に寄与している可能性を示す結果となった。
さらに、イサダ給餌区は摂餌効率が高く、水槽内の残餌や汚れが少なく保たれ、水質維持が容易であることも観察された。
今後は、これらの結果を踏まえて摂食効率や栄養吸収メカニズムのさらなる解明を進め、養殖現場での実用化に向けて研究を継続していく。