三陸エンリッチメント研究室

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Special talk特別対談・座談会

学術的討論会 Ⅱ(5人座談会)

井田齊名誉教授、黒倉壽名誉教授を三陸臨海研究室にお招きして行った、特別対談「水槽で魚を飼育するということ-知ると飼うのが楽しくなる科学的知見-」に合わせて学術的討論会を行いました。今回の5人座談会では、2017年に「アミエビを観賞魚用の餌料として分けて欲しい」と連絡をくれた、私たちの水生生物用餌料開発への道を切り開いたアクアリストの江見友子さんもゲストスピーカーとして参加していただきました。
アクアリスト視点を取り入れた5人の議論は、科学的知識と実践的な飼育体験が交差する豊かな内容となり座談会はさらに盛り上がりを見せました。

  • 井田 齊

    井田 齊Hitoshi IDA

    北里大学海洋生命学部 名誉教授

    主要研究テーマ:魚類分類学・水産資源学

    主な著書:『魚はすごい』小学館新書(著)。『フィールドガイド日本の淡水魚図鑑:魚の生息環境と見分けるポイントがわかる』誠文堂新光社・『海のミクロ生物図鑑:チリメンモンスターの中に広がる世界』仮説社・『サケマス・イワナのわかる本』山と渓谷社・『サバがマグロを産む日』つり人社・『魚・水の生物のふしぎ』ポプラ社・『資源生物としてのサメ・エイ類』恒星社厚生閣・『サケ・マスのすべて』平凡社・『現代の魚類学』朝倉書店・ 『魚の事典』東京堂出版・ 『日本産魚類大図鑑』東海大出版会・『小学館の図鑑NEO魚』『小学館の図鑑NEO POCKET魚』小学館(いずれも共著)。『マリン・アクアリウム』『海水魚飼育入門:Q &Aマニュアル』緑書房(監訳)など多数。「第12回東急財団 社会貢献環境学術賞」受賞。

  • 黒倉 壽

    黒倉 壽Hisashi KUROKURA

    東京大学大学院農学生命科学研究科 名誉教授

    主要研究テーマ:水圏生産科学・水産増殖学

    主な著書:『海の食糧資源の科学:持続可能な発展に向けて(生命科学と現代社会)』『地域が生まれる、資源が育てる:エリアケイパビリティーの実践』勉誠出版・『ナマズの博覧誌(生き物文化誌選書)誠文堂新光社・『養殖海域の環境収容力』『水産養殖とゼロエミッション研究』『水圏の放射能汚染:福島の水産業復興をめざして』『農学・水産学系学生のための数理科学入門』『水圏生物科学入門』恒星社厚生閣・『食卓に迫る危機:グローバル社会における漁業資源の未来』講談社・『資源経済学への招待:ケーススタディのとしての水産業』ミネルヴァ書房・『人と魚の自然誌:母なるメコン川に生きる』世界思想社・『魚食をまもる水産業の戦略的な抜本改革を急げ』日本経済調査協議会(いずれも共著)など多数。「令和元年度日本水産学会功績賞」受賞。

  • 江見 友子

    江見 友子Tomoko EMI

    アクアリスト

    小学2年生の頃、父の赴任先であるパプアニューギニアで小川からグッピー(外来種)を採取し、バケツで飼育したのがアクアリウムの始まり。その後、金魚や鯉、熱帯魚の飼育を経て、小さなシマフグを採取したことをきっかけに海水魚の飼育も開始。アクアリウム歴約40年、うち海水魚飼育歴は約20年。これまでにチョウチョウウオ科、ベラ科、キンチャクダイ科、ハタ科など、世界各地の魚を延べ数百匹にわたり飼育してきた。2015年、米国最大のマリンアクア展示会・講演会MACNAで市販冷凍餌の多様性に感銘を受け、日本での海産由来の餌料の少なさに疑問を抱く。高鮮度のアミエビを求め、国内のメーカーや漁業関係者にアプローチするも難航していたが、SNSで見たツノナシオキアミの画像をきっかけに「有限会社三陸とれたて市場」に連絡した。それ以降、精密凍結活餌料の試験給餌を行い、アクアリスト視点からの知見を三陸エンリッチメント研究室に提供している。

  • 八木 健一郎

    八木 健一郎Kenichiro YAGI

    有限会社三陸とれたて市場 代表取締役

    北里大学水産学部(現・海洋生命科学部)卒業。2001年に地元の商店と協働して鮮魚のネット販売を始め、2004年有限会社三陸とれたて市場を設立。船に設置したネットカメラで漁を中継するなど、ICTを活用した販促を行う。東日本大震災後は、地元の漁業者とともに漁業復興に取り組み、魚の加工プラントを新設。地域の雇用創出に貢献するとともに、競争力のある商品開発を行う。第27回「東北ニュービジネス大賞」東北アントレプレナー大賞、令和4年度「新しい東北」復興・創生の星顕彰、2022年度第27回「安藤百福賞」発明発見奨励賞など受賞多数。静岡県出身。1977年生。
    取得資格:第1種管理衛生者・FDAトレーニング有資格者・PCQI(Preventive Controls Qualified Individual)認定者

  • 八木 健一郎

    𡈽方 剛史Takeshi HIJIKATA

    三陸エンリッチメント研究室 代表

    2012 年復興支援を目的に岩手へ移住。緊急時支援の後は、被災地プロダクツを全国に販売する物産展ディレクション業務で起業。その後、野外イベント等の制作にも活動を広げている。また、生産者に寄り添い強いブランドを育成していく取り組みを得意とし、代表作品には陸前高田市米崎町・佐々木商店「雪解け牡蠣」などがある。2020年、復興支援先の一つにあった有限会社三陸とれたて市場と「三陸エンリッチメント研究室」を合弁で立ち上げ、地域水産資源の高度経済化モデルの育成に挑む。「大船渡ビジネスプランコンテスト2021」ビジネス部門最優秀賞、第6回「グッドアクアリウムデザイン賞2022」AQUA Prize(特別賞)受賞、第20回リエゾン-Ⅰ 研究開発事業化育成資金採択。神奈川県出身。1978年生。
    取得資格:調理師・PADIレスキューダイバー・食の6次産業化プロデューサーレベル3・PCQI(Preventive Controls Qualified Individual)認定者
    所属学協会:日本水産学会・日本魚類学会・日本動物園水族館教育研究会

  • 前編

    科学者とアクアリストの交流の場の重要性
    オープニング
    1.アクアリストの視点と研究者や産業界の視点の違い
    2.アクアリストと科学者の知見交換の場の不足
    3.新しい学問の立ち上がりは「邪道」に注目する研究から始まる
    4.時代や技術の変化によって学問の本流は変わり得る
    5.「個」の魚に対応するコミュニティを作り上げる
    6.餌料ビジネスを超えた「海の天然素材屋」としての立ち位置
    7.ユーザーの小さな悩みに対応する経営者の視点
    8.アメリカに学ぶ学会と産業界の交流の場の在り方
    9.学会内にブースを作って研究者に凍結餌料をPR
    10.餌料・研究素材向けマーケットでこそ価値が生まれる資源の存在

    前編をテキストで読む
  • 後編

    餌料が持つ効果に関する科学的情報を発信する意義
    11.アクアリストから見た魚卵ごとの魚の反応の違い
    12.主要魚の餌料は全ての観賞魚に対して万能なのか?
    13.飼育者から求められる餌料のレベルの多様性:こだわるマニアの存在
    14.餌料成分の効果を科学的根拠に基づいて確かめられる体制が必要
    15.ラクトフェリンの明暗:白点病は治せるが過剰投与は魚を殺す
    エンディング

    後編をテキストで読む