三陸エンリッチメント研究室

MENU

OF-011科学海洋掘削におけるCAS凍結法を用いた生物学的研究用サンプルの保管について

2021.03.2

【目的】科学海洋掘削による海底下生命圏の発見により、地球全体の微生物のバイオマス分布や代謝機能に関する研究が注目されている。地球深部探査船「ちきゅう」をはじめとする掘削プラットフォームで採取された試料は、地球科学や生命科学に関連する幅広い学術研究に用いられ、人類の貴重な科学資産の一つとして、その適切な保管・品質管理が必要となっている。本研究では、生物細胞を壊さない凍結技術として注目されているCell Alive System (CAS)を用いた低温掘削試料保管について検討を行った。
【方法】「ちきゅう」の試験航海で得られた掘削試料についてCASを用いて凍結して-80℃保管した試料、および4℃・-20℃・-80℃・-170℃(液体窒素タンク)で冷蔵、冷凍した試料をそれぞれの温度で保管した。6ヶ月及び2年後に試料中の微生物細胞数を計数し比較した。
【結果と考察】保存の結果、CASで凍結した試料以外は6ヶ月及び2年間保存後に微生物細胞数の減少が見られた。また、-80℃及び液体窒素で保存した試料は2年間の保存の後に微生物数がさらに減少していたが、CASで凍結した試料の微生物はほぼ減少しないことが分かった。CASは試料に微弱な交流磁場を与え、水分子を振動させて冷却する。これにより試料全体を均一に氷点以下に冷却した(過冷却)後に凍結が起こるため、試料中に微細かつ均一な氷結晶が生じ、微生物細胞を破壊せずに保存できると考えられる。本技術は貴重な掘削試料の凍結保存に有用であり、海洋底下に広がる未知生命圏を将来の発展的な分析技術で研究するために必須の保管方法となると考えている。